|
|
■「一人シリコンバレー創業プロジェクト」のどこに魅力を感じて応募されたんですか? |
3つほどあります。
1つ目は「一人シリコン」という名称にもあるように一人でもゼロからの段階でも(シードステージでも)投資する点に魅力を感じました。シードステージにまともに投資をしている仕組みなんて日本には他にないじゃないですか。
2つ目はこのプロジェクトの経営者に対する思想、考え方に共感したというのが大きな理由です。「経営者候補は経営トップとしての経験と成長の機会を獲得できる。事業を所有するオーナー経営者ではなく、あくまでも事業の急速な成長の真の立役者、すなわち『プロの経営者』として成長することを目指す」というコンセプトに共感したんです。
3つ目は牧野さん(ワークスアプリケーションズ・代表取締役最高経営責任者)への憧れがありました。説明会に行ってみて初めて会って話を聞いてみたのですが、ソニーにはいないタイプの人だな、と衝撃を受けました。
|
|
■本プロジェクトの特徴的なスキームである、株式を持たずに起業されたことに不安はなかったですか? |
最終的にはなかったですね。なぜなら、自分の事業そのものがうまくいくと思っていましたから。スキーム自体は事務的な問題に過ぎません。
それに、この事業分野については、株主よりも自分たちの方がビジョンがあり、エキスパートであるという自負もありました。そもそも株主やステークホルダーにあたる、「一人シリコンバレー創業プロジェクト」主催・共催者との間に強固な信頼関係もできていました。長いやり取りの中で、全員が Win-Win の関係になるように、良いチームワークと信頼が生まれていきました。
だから、スキームについては、不安はなくなりました。むしろ、資本と経営が分離される。そうした新しい経営モデルに対して、自分たちのチャレンジスピリットのほうが強まっていったと言えます。
|
|
「実力のある良い経営者は、経営者からのみ生まれるはずだ」 だから、まず経営者になることが大事だと思った。
|
■そうは言っても、いざ起業するとなると迷いはなかったのですか? |
そりゃ、ありましたよ。一番悩んだのは、ソニーを辞める時ですね。本当に辞めていいのか? とかなり悩みました。それまでは、いかにソニーの中で仕事をやり切れるかを常に考えていましたし。
8年間ソニーにいて得たものがたくさんあります。「ソニー流の仕事のやり方・人脈」が蓄積されていましたから。でも、それをすべて捨てて、外の世界でゼロから戦って勝てるものだろうか? 自分よりも早く、外の世界で同じように蓄積をしてきた人たちに勝てるのだろうか? と不安に思ったりもしました。蓄積がゼロになってしまう不安はありましたね。
|
|
■最終的にソニーを辞めようと思った決め手は何だったんでしょうか? |
プロの経営者を目指した時の、必然性で考えた結果ですね。
私は「実力のある良い経営者は、経営者の中からのみ生まれるはずだ」と思っていました。ゆえに、まず小さくても、経営者にならなければいけないと考えたのです。
今の日本では、「プレイヤー」として優秀であった人間を、経営者として抜擢して、それからトレーニングを積ませるような傾向にあります。しかし、大企業の場合、多種多様にわたるビジネスにおいて、トレーニングの期間は当然長く、そんなインターンのような経営者を抱えている従業員の方はたまったもんじゃありません。ちょうど、ジーコ監督が監督として勉強しながら、W杯に出場して、惨敗したことがいい例かもしれません。勝利の確率を上げるためには、プロの監督、プロの経営者が必要なのです。
このような考えに立てば、まずは、経営をしてみること。そうでないと始まらないのではないかと思うようになりました。確かに大企業にいればプロジェクトの責任者ぐらいは任せられますが、小さくても自分でジャッジし、自分ですべてを背負うことに比べれば、プロジェクト責任者で得られる経営者としての成長は小さなものです。ですから、ソニーにとどまるのではなく、まず自分で経営をするという道を選んだのです。
あとは開発の中心である藤田(執行役員副社長 兼 コーポレートエグゼクティブフェロー)をはじめ、非常に優秀なメンバーに恵まれた、ということも決め手であったと思います。創業時のメンバーがその後の会社の質を決めていく訳ですから、その点、本当にゼロからのスタートに集まってきてくれたメンバーにはいつも感謝しています。
|
|
■その後、投資に至るまで、どういう活動をしていたのですか? |
先程、自分の事業そのものがうまくいくと思ってた、と言いましたが、なぜそんな自信があったのかというと、投資に至るまでの最後の試験として、ワークスアプリケーションズCOOの阿部さんに「1ヶ月で20社ヒアリングして来てください」と言われました。
実際に、見込み客がどれくらいいるのか? を調べる目的はもちろん、私の実行力・行動力を試したかったのだと思います。「見込み客がいないのに起業するのは無謀だ」と言われました。当時まだ、ソニーで働きながらの時期でしたし、無理な注文を出してみて、それにどう対処するか見たかったのだと思います。
しかし、「無理と思われてるなら、いっちょやってやろう」という挑戦心がムラムラ沸いてきて、平日の夜、土日を利用して見込み客を訪問してまわりました。商品も無い、会社も無い。その状況で、見込み客に「買ってください」と言うだけですよ。かなり無茶ですよね。しかし結局、1ヶ月で20社と言われたのですが、30社まわりました。そのうち5〜6社が起業した後必ず買ってくれると約束してくれました。そして、ほぼ100%、私たちのアイディアを支持をしてくれました。
この時は、本当に辛かったですけど、この体験のおかげで、見込み客のニーズが確信できたことは大きかったです。また、このヒアリングのおかげで、自分のビジネスに反対する人がいなかったことが大きな自信に繋がりました。あと、ヒアリングで30社回ったことで投資側のこちらを見る雰囲気も変わりましたね。もちろん、このヒアリングで顧客ニーズを捉え、その後の開発スピードを急速にアップした事が、起業後の躍進に繋がったといえます。
|
|
■なるほど。それは良い体験をしましたね。他に「一人シリコンバレー創業プロジェクト」選考の過程で役立ったことは何ですか? |
ビジネスプランをブラッシュアップするのにとても役立ちました。起業したいと燃えている時は、誰でも思いこみが激しいものです。
そうした思いこみが激しい部分を客観的に「そうではない」と指摘してくれたり、疑問を持ってくれる人との対話を通して、自分の中でもどこが詰めが甘いのか?など見えてくるものです。
思いこみが故に自己中心的になりがちな部分を、客観的に見つめることができました。相手に説明する時に、自分が本当に理解出来ているところとできていないところがよく分かりましたし。これは、大切なことだと思います。
|
|
| |
| 【目次】 |
⇒ 『一人シリコンバレー創業プロジェクトに参加して』
|
|